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お育ちのいい夫にてこずる妻日記。エコだったり毒舌だったり。

2024-04

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ハナコさんは、当面、実妹(義兄のおばさん)の家に預かってもらうことになった。

義兄と姉の家には、ハナコさんは数回しか行ったことがない。
おばさんちなら、定期的に行き来しているので、
ハナコさんも記憶も、まだしっかりしている。


ハナコさんは相変わらず、家に帰りたがる。
帰したら最後、
また失踪してしまうかもしれない。

おばさんは必死で引き止める。
一日中そばにいて、家事などなにもできない。
怖くて目が離せない。

娘さんも一緒に、交替でハナコさんを看る。
ご機嫌な時には、何も問題はないハナコさん。
でも一旦帰ると言い出すと、手が付けられない。
それは一日何回も繰り返される発作だ。


ハナコさんが行きたがらないとわかっていながら
デイサービスに申し込んだ。
自分たちの体と心がもたないからだ。


もうおばさんは、姉に介護をするようには言わなくなった。
ハナコさんを施設に入れるのはかわいそうだ、と
絶対反対の姿勢をとりつづけていたのに、
「これはもう、プロの手を借りるしかない」とわかってくれた。


しかし、おばさんにも、いつまでも頼るわけにはいかない。
途方に暮れていると、ケアマネージャさんから連絡が入った。
ハナコさんの2回目の徘徊から、4日後だった。


「グループホームが空きました! 
早い者勝ちなので、すぐに連絡をしてください!」


おいら、知らなかったんだけど、
グループホームみたいな施設って、
住んでいる地域で入るのが一般的らしい。

姉が住んでいる市で入ろうとしても、
地域住民が優先されてしまう。

ハナコさんの住んでいる市の、グループホーム。
頻繁に通うことはできない。
でも、そんな贅沢なことは言ってられない。

今回のグループホームの紹介も、
本来なら、ウェイティング中の人がいるはずである。
それでも、ハナコさんは「地域住民」かつ「一人暮らし」ということで
優先してもらえたのだろう。
二度とはないチャンスだ。


義兄も、疲れ果てていくおばさんの様子を目の当たりにし、
その上、今すぐハナコさんを引き取ることが自分たちにできない、
ということも良くわかっているので
とりあえず入居には同意してくれた。

問題は、ハナコさん自身が同意してくれるか、どうか。


~10へつづく~


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これが一番の難関。







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姉は、相談をしていたケアマネージャに、
即「徘徊が始まった」ことを伝えた。



実は、姉は家の近くのグループホームに見学に行っていたのだが
そこは10人以上のウェイティングリストがあって
入れるとしても数年後、というような話だった。

しかしもう、そんな悠長なことは言ってられない。
姉が出張から戻っても、
徘徊が始まった以上、一人で介護なんてできない。


姉が仕事を辞め、義兄にも仕事を減らしてもらい、
デイサービスを活用すれば、介護はできるのかもしれない。
きっと、そうして家族を大切に介護している、
愛情深い人は沢山いるのだろう。


でも、姉は言う。

「私が介護するっていうのはね、
したい、と思うからじゃなくて、
嫁としてしなくちゃいけない、って思うからなの。

自分の親だったら、したいって思えるかもしれない。

でもハナコさんのこと、好きだけど、
最期まで家で一緒にいたいって思えないの。
トイレに失敗したり、夜中に徘徊されたりしたら、
怒ったり、部屋に鍵をかけて閉じ込めたり、
しちゃうんじゃないだろうか。

5年後、10年後に、
自分の人生はなんだったんだろうって
後悔しちゃうんじゃないかな?

結婚で全部狂ったって、
夫やハナコさんを憎んじゃうんじゃないかな?


一日中同じ話を繰り返してると、気が狂いそうになるよ。
ハナコさんが悪いんじゃないってわかってても、
怒鳴りたくなる。

いつか私、離婚すれば解放されるって思う気がする。
そしたら、放り出されるハナコさんも、夫も、
私だって自分が嫌いになるし、
誰も幸せにならないよね」


姉は完璧主義者だ。

「こうあるべき」という行動をとる優等生だ。

自分の状況から考えて、ハナコさんと同居して
介護をするべきだと思ってる。

でも犠牲にしなくちゃいけないものの膨大さに、
どんどん精神的に弱っていった。


きっと介護をすれば、それはもう完璧な介護を成し遂げる人だ。

だけど姉はそのために、
キャリアや、子供を持つという計画を諦めなくちゃいけない。

特に子供に関しては切実だ。
姉は年齢的にも高齢出産に入る。
おそらくこの数年で妊娠しなければ、
かなり難しくなってくるのではないか。

今までキャリアを優先して子供を先延ばしにしていた。
でも、常に子供のことは考えていた。
きちんと定期検査は受けていたし、
不妊治療の先生にも相談を続けているらしい。


おいらが妊娠して、一番喜んでくれたのは、
姉かもしれない。

「自分にもし子供ができなくても、
あいざぁの子がいれば、それで充分って思う」

きっと姉は、親や祖父母のことを考えて
子供を産まなくちゃ、と思っていたのだろう。
だからおいらの妊娠で、肩の荷が下りたというのもあると思う。



こんな状況だというのに、
ハナコさんはもう一人では暮せなくなってしまった。
いや、暮そうと思えば、暮せる。
毎月15万の食料品を買い、
時折ふらっといなくなり、
警察に保護される暮らしなら、もうしばらく、できる。

でもそんな暮らし、続けさせるわけにはいかない。



~9へつづく~


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姉の苦悩はよくわかる。おいらはエゴだと思わない。


ハナコさんが見つかって、
全員がまた今までと同じように生活できると思ってた。
でも、そうじゃなかった。


ひとまず、腰を痛めてることもあるので、
ハナコさんはおばさんちに滞在することになった。
翌日病院に行くという予定。
義兄は仕事のため、家に引き上げた。


姉は義兄が戻るなり、
グループホームの話を持ち出したが、
義兄は
「今回は郷里に帰るという特別な状況だったからだ。
もうこんなことはないと思う」
と言った。

でも、姉はひとまず
ケアマネージャさんに相談することにした。


ハナコさんの怪我は思ったより軽くて、
翌日には普通に歩けるようになった。
見つかったばかりの時のような、
放心状態に戻ることもなく、
元気でニコニコ、いつものハナコさん。


ああ、よかった、もう大丈夫。
みんなそう思ってた。

ハナコさんは数日おばさんの家にいたが、
毎日自分の家に帰りたがった。
おばさんはもうしばらく家に泊めたかったのだけれど、
ガンコなハナコさんは、
自分でタクシーを呼んで、帰ってしまった。


そして、家に戻り、
その翌日、またいなくなった。





今度は5時間で見つかった。
実は、いなくなったことに誰も気付いていなかった。
警察で保護され、
その連絡で発覚したのだ。

なぜ5時間だとわかるかというと、
またしてもお隣さんが見ていたのだ。
(市原悦子…?)

スーパーに行くのとは違う方向だから、
おかしいなあ、と気になっていたらしい。


姉は学会で出張中、
義兄も仕事で出張中だったので、
またしてもおばさんの家に。

今度は放心状態にはなっていなかったけれど、
なぜ隣町にいたのかは、
ハナコさんもわからない。

というか、
「私にだっていろいろあるんだから」
と、うるさく言われることにご立腹。

「どうして私がどこかに行っちゃいけないの?」
ということらしいのだが
警察が「あまりに様子がおかしいので保護した」と言うからには
ハナコさんも行方不明中は怖かったんじゃないだろうか。


姉が徘徊が始まった、と言うと
義兄は怒ったらしい。
これは徘徊じゃない。
ちゃんと目的があって、でかけてるんだ。
郷里に帰るとか、教えてくれないけど、隣町にいったのだって
家を出るときにはちゃんと目的があったんだ。
だからこれは徘徊じゃない。


  _, ._
( ゚ Д゚)


わかるんだけどさ。気持ちは。
現実を見ようよ、おにいさん。


おいらにとってハナコさんは、血のつながりもないし
数回しか逢ったことがない存在。
姉にとっても、それに近いだろう。

でも実の息子には、
この事実は簡単には受け入れられないことなのだ。

壮絶だ、とおいらは思った。
この病気は、ひどすぎる。



姉と義兄が動けないので、
おばさんがハナコさんを面倒見てくれたのだが、
やはりハナコさん、
とにかく自分の家に帰りたがる。


でも今回は、帰すわけにはいかない。


夕方になると、ハナコさんは暴れるようになった。
家に帰らなくちゃいけない、
夫に食事を作らなくちゃいけない、
息子3人がおなかを空かせている。

どんなに「だんなさんは死んだでしょ」
「息子なんてどこにいるの」と諭しても
堂々巡りだ。
スーパーの時と同じ。

おばさんの娘さんが駆けつけてくれて、
24時間誰かがそばにいるような状態。

おばさんはそれまで、
ハナコさんの介護は姉夫婦が同居してすべき、と言っていたが
自分がやってみて、
とても姉ひとりでは看られないと気付いた。



~8へつづく~



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やってみなくても、考えりゃわかりそうなもんだけど。

じいちゃんばあちゃんの癌のことで、
あいざぁ一家に激震が走った時、

ハナコさんが、失踪した。


ハナコさんは、実の妹(義兄のおば)と、翌日、郷里に向かう予定だった。

亡き弟の13回忌があって、
それに一緒に行く予定だったのだ。


郷里にいけば、懐かしい景色をみて、
懐かしい人たちにも逢って、
きっと良い刺激になる。
そう、姉も義兄も考えていた。

ハナコさんも、郷里に向かうのを楽しみにしていた。
もしかしたら、楽しみにしすぎていたのかもしれない。

昼過ぎに、お隣さんが、
ハナコさんが旅支度をして家を出るのを見ていた。
お隣さんはハナコさんの病状を知っていて、
ゴミだしの日など手伝ってくれる。

姉も行く度に挨拶を欠かさず、
何かあったら連絡をして欲しいと電話番号を伝えていた。

ハナコさんの様子がいつもと違うので、
お隣さんは心配になって、姉に電話してくれた。


一日、早い。

姉は少しパニックになって、おばさんに連絡。
おばさんがハナコさんちまで行ってくれたが、もぬけの殻。
夕方になっても、ハナコさんは帰ってこなかった。

姉は仕事が抜けられず、
義兄が駆けつけたが、
おばさんと義兄が待てど暮せど、ハナコさんは帰ってこない。

警察に連絡し、ただひたすら、無事を祈って待つしかない。


生きた心地がしなかった、と義兄は言ったらしい。
自分が物事を先送りにしたから、こんなことになった。と
泣いて姉に(あるいはハナコさんに)詫びたらしい。

姉は姉で、
ばあちゃんのセカンドオピニオンを取る為に
有名な先生に看てもらえるよう奔走+日常の勤務で
余裕をなくしていた。



ハナコさんが見つかったのは、18時間後。

最寄り駅から4つ先の駅だった。
始発の準備をしていた駅員さんに発見されたのだが、
その姿はひどいものだった。

体中どろだらけで、
服には血までついていた。
傷は擦り傷だったのだが、どこかで転んだらしく、
腰が痛くてまともに歩けなかったらしい。


ハナコさんが警察に保護されて、家に戻った時は、
話すこともできない状態だった。
ずっとぶつぶつ独り言を言い、
放心状態のように見えた。

おばさんがどんなに話しかけても、
ハナコさんは全く反応しない。
このまま元に戻らないのではないかと、
おばさんは泣き崩れてしまった。


仕事を片付けるためにネットカフェにいた義兄が
30分ほど遅れて駆けつけると、
「ああ、アキオ」
と笑ったらしい。

そこから、ようやく話ができるようになった。


アキオはハナコワールドでは息子なので、
つまり母親というのは、
息子には心配をかけたくないのだな、と
おいらはこの話を聞いて、じーんとした。


「まったく、たいしたことじゃないんだから、
そんな心配そうな顔をしなさんな」

とハナコさんは泥まみれ血まみれの服で堂々と言ったらしい。


見つかって、よかった。
誰もがそう思ったけど
事はそんなに簡単ではなかった。



~7へ続く~


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アルツハイマーという病気は、まだ治療法がなく、
唯一アリセプトという薬が進行を遅らせると言われている。

しかしその効き方にも個人差がある。
姉は新薬の開発情報を調べまくっていたが、
劇的に効くというものは、まだない。

実はドイツでは、アリセプト以外にも数種類、
アルツハイマー薬が存在している。
効き目のほどはわからないが、
おいらが購入し、輸出するということを考えたことがある。

おいらが調べた限りでは、
まずハナコさんがドイツにやってきて、
診察を受けなければならない。

それも一日だけでなく、経過を見るために
数ヶ月の滞在が必要だと言われた。

数ヶ月も、姉も義兄も仕事を休むことはできない。
おいら一人で引き受けることも考えたが、
万一症状が進行した場合、徘徊が始まって、
外国で迷子になってしまったら、ハナコさんはどうなるだろう。

言葉が通じないということを
こんなに恐ろしいと思ったのは初めてだった。
最悪、ハナコさんが発見されないことだってありえる。

それでもおいらは真剣に、ハナコさんを受け入れることを考えた。
考えて考えて、やっぱりムリだと思った。
そして、姉が仕事を辞めて介護をすることも、ムリだと思った。
どれだけシュミレーションしてみても、
アルツハイマーの人を一人で看ることはできない。



そうこうするうちにも
ハナコさんの擬似ワールドは、どんどん広がっていった。

「最近は、息子が3人いることになったらしい」
と姉はため息をつく。
本当は、義兄はひとりっこ。

ハナコさんは自分の妹に
「男の子を3人も育てるのがどんなに大変か、
あなたにはわからないわね、ふふん」
と自慢げに言うらしい。

誰やねん、あとの二人は。

と思ったら、どうやら、自分の弟が息子になっているようだ。
亡くなった弟と、生きている弟、この二人が、
いつの間にか息子になってるらしい。


誰が長男なのか、などを詳しく聞くと、
よくわからなくなってしまうので
ハナコワールドの詳細はわからないのだけれど、
とりあえず、義兄ヤスヒコの存在感は薄く、
常にアキオがトップバッターで登場。

今まで疎遠にしてたバチがあたったね…とおいらなんかは思っちゃう。
しかし、母親に忘れられるなんて
義兄も辛いだろうな。


姉に関しては百発百中、
名前を間違われたことはない。
しかし、ポジションがいまいち。
アキオの嫁、になっちゃってるもんだから。
(時々、もう一人の弟の嫁にもなる)


しかし、ここで100%理解されてる人物がいることが判明!

彼に関しては、
名前もポジションも各情報、全て完璧。


その人の名は…



秋川雅史さん



おめでとう、秋川さん!
あなたはハナコワールドに君臨してますよ!


ん? 秋川さんて誰って?
みんな知ってるでしょ。

「千の風になって」の歌い手さん。

なぜかここ一年ほどで、彼の大ファンになったハナコさん。

息子の顔は覚えられないのに、
彼のコンサートの日付は完璧。
姉と一緒にコンサートに行き、
「3年寿命が延びたわっ」
という、にんともかんともな発言まで飛び出した。

でも残念なことに、記憶は彼自身だけ完璧で、
コンサートの内容は思い出せないらしい。

こんなに好きなんだから、
何度でも思い出せたら良いのに。
神様のいけず。




こうやって、症状は確実に進みながらも、
ハナコさんは楽しそうに日々を過ごしていた。
姉や義兄も、綱渡りのように感じながらも
行動には移せず、
ただ時間だけが過ぎて行った。

ずっとこのまま、
毎月15万もの買い物はしても、
それでも同じように暮せていけるんじゃないかと
たぶん誰もが思ってた。


それでも、事件が起こった。



~6へつづく~



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こんなに長くなるとは思わなかったな、この話。
プロフィール
HN:
あいざぁ
性別:
女性
自己紹介:
ドイツ在住、細々とライター業。
海外転勤につられて、まんまと策略婚。
夫との育ちのギャップに窒息寸前。


夫:マンジロウ。日本人だがアメリカ人的思考。
息子:ゴウ。幼児。

☆☆★★☆☆☆☆☆☆

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著作権はあいざぁにありますので、勝手な引用は禁止です。勝手なリライトはおいら泣いちゃうのでやめてください。書き直して酷い文にされることほどツライことはないです。


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