おいらは友達が多いと思う。
でも、おいらが心を許している友達は、少ない。
心を許していないのなら、友達ではない、とするならば、
友達ではなく知り合いが多いということになる。
社会人になるまで、一生付き合いたいと思う友達には出会わなかった。
高校では、友達に囲まれながら、
はやくここを出たいとばかり思っていた。
自分がほしいと思う「友達」に出会えなかったから。
高校選びを失敗したと、3年間思い続けた。
おいらは「親友」がほしかった。
でも、どうしてもそういう人には出会えなかった。
Aちゃんという子がいた。
高校時代、彼女と仲が良かった。
カラオケに行ったり、一緒に買い物に行ったりした。
おいらが彼女を好きというより、彼女がおいらを好きで
付きまとってきた、という感じだった。
好かれれば、悪い気はしない。
それに楽だ。
他に一緒にいたいと思う子もいないし。
だからおいらは、Aちゃんと遊ぶことが多かった。
高校時代のクラスメートは
Aちゃんとおいらは親友と思っていたかもしれない。
でもおいらは、そういうふうには感じてなかった。
大学に入ってから、
おいらは一人暮らしがしたくて、でもお金がなくて、
苦肉の策で、
数ヶ月、短期留学する友達の空き部屋を貸してもらった。
おいらの大学は京都だったので、
Aちゃんが彼氏と観光ついでに来たいといいだした。
おいらは快く、Aちゃんと彼氏を部屋に泊めた。
おいらが借りた部屋は、2部屋あったので、
一部屋をふたりに使ってもらい、おいらは寝室で寝た。
夜中、Aちゃんが寝室に来た。
彼氏とけんかでもしたのかな、と、おいらはベッドに彼女を入れた。
彼氏が後ほど、やってきた。
そして、彼氏はなぜか、おいらに覆いかぶさってきた。
おいらはパニックになり、暴れたが、
彼氏は本気でおいらのパジャマを脱がし、肌をまさぐった。
隣に寝ていたAちゃんが、
黙って寝室を出て行った。
この失望感がわかるだろうか?
友達に見捨てられた失望感が。
おいらは暴れ、叫び、男をベッドから突き落とした。
はっきり言っておくと
男がその気になったら、女は力ではかなわない。
どんなにあがいたって、
レイプをとめることはできない。それを実感した。
力の違いというのは、すさまじいのだ。
男の腕を防ぐこともできない。
底なしの恐怖だった。やられる、と思った。
男はおいらの下着まで脱がしていたけれど
ベッドから落ちると、ばかみたいな間抜け面で
「なんでだめなの?」
と言った。
世界中でこんなアホな問いかけがあるだろうか?
だめな理由なんて5000でも思いつく。
OKの理由なんて皆無だ。
おいらは寝室から彼氏を追い出し、寝室の鍵をしめた。
そして気を失った。
翌日、二人はとなりの部屋に居た。
おいらがドアをあけると、
Aちゃんのおっぱいを男がもみしだいていた(服は着てた)
丁重にお願いして帰ってもらった。
ふたりとも、昨日の夜のことには触れなかった。
レイプ未遂ではあったが、
男に触られた肌が気持ち悪くて吐きそうで、
訴えることを考えた。
でも状況から、証明が難しいだろうと思って、やめた。
男に襲われかけたことよりも、
友達に見捨てられたことが、恥ずかしくて
誰にも知られたくないと思った。
こんな人間を、友達にしていた自分が情けなかった。
それも、別に好きで友達にしたわけではなかった。
彼女の方がおいらを見つけたのだ。
好かれていると思っていたのに、そうではなかったのか?
彼女はどうしてあんな行動を取ったのか?
その後、おいらは彼女に連絡を取らなかった。
電話がかかってきても、出なかった。
一生口をきかないと決めた。
おいらの人生から彼女を抹殺することにしたのだ。
これはおいらの愛情だった。
今まで彼女からもらった様々な思い出に対する、
誠意だった。
あなたが嫌いだと、言いたくなかった。
おいらはおいらなりに、Aちゃんを好きだったのだろう。
でも、逢わざるを得ない状況に陥った。
つづく。
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