随分昔、小笠原諸島の父島に一人旅した。
船で25時間かかる島だ。
海が好きなおいら、もう天国だった。
ある無人ビーチにいくには、山をふたつほど越えなくちゃいけなくて
険しい山道を登っていた時のこと。
渓谷に、アオノリュウゼツランを見つけた。
あのね、これね、そりゃあ珍しい植物なの。
ランなんて付いてるけど、蘭じゃなくて、
サボテンかアロエに近い。
しかも巨大。
ブルドーザーくらいの大きさ。
100年に一回、花芽を出し、花を咲かせて朽ちるので
幻の花とか言われてる。
それが父島では、百花繚乱の勢いで咲いてた。
本当に100年に一回なのか?と疑いたくなるくらい。
べつにキレイな花ではないのだけれど
原始的な迫力がある植物で、おいらはそりゃあ感動した。
それがヨーロッパにきて、よく出会う。
一度はポルトガルのカスカイス。
次にイタリアのチンクイテッレ。
どちらも崖っぷちに鎮座して、花芽を出していた。
アオノリュウゼツランに出逢う町は、どこもおいらにとって魅惑的。
すごくすごく思い出深い。
もう一度行きたい。
なぜかどこも、ご飯が美味しいんだよね、とびぬけて。
とりあえず、日本に帰国したら、また父島に行きたいなあ。
と、マンジロウに話してみた。
「うーん、島かあ…。行ってらっしゃい」
「あれ、マンジロウ、行きたくないの? 海きれいだよ」
「んー、
俺、泳げないから」
Σ(゚□゚(゚□゚*)ナニーッ!!
夫婦になって一年以上、
おいら、
マンジロウがカナヅチって知らなかったよ。
つーか、そういう大切な情報、隠すか、フツー。
結婚のときに確認しなくちゃいけない重要情報じゃん。
「僕は泳げませんが、それでもいいですか」って。
かなり減点だよ。
だっておいら、海上バンガローに泊まって、目が覚めたら海に飛び込むのが夢なんだよ?
できないじゃん!
ああ、ショック。
じゃあ、父島はひとりで?
行きにくいなあ…
なんか羽のばす、って感じじゃないよなあ。
泳げないって、絶対隠してた。
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