ゴウは嘘をつかない。
なんでこんなに嘘をつかないんだろう、っていうくらい、つかない。
例えば、おやつの時間にグミを瓶詰めで渡して、
みっつだけ食べていい、と言う。
彼は自分の部屋でみっつ食べて、
おいらのところに来て、もうひとつ食べたいと言う。
母親はいないんだし、好きに食べればいいのに
わざわざ聞きに来る。
こいつ、ちょっと頭悪いんちゃうかな。
そこでおいらは聞く。
いくつ食べたの?
ゴウは正直に答える。
みっつ。
じゃあ、それで終わり。
このやりとりの翌日にも、まったく同じことを繰り返す。
なんでこっそり食べないんだろう。
なんで数をごまかさないんだろう。
もしかしてこの子、超頭悪いのかな。
とにかくそんなわけで、おいらにとってゴウは
うそをつけない可哀想な子である。
先日、同じアパートの男の子が遊びに来た。
まだ二歳半、ゴウの遊び相手にはなれないのだが
彼はゴウとゴウのおもちゃが大好きで
しょっちゅうやって来るわけだ。
ゴウはどうしても一緒に遊びたくなくて
細くドアを開けて
「僕、今日は時間がないからね。遊べないよ」
と冷たく言い放つ。
二歳半の男の子は拒絶されて泣きそうになってる。
ママがやってきて、
「一緒に遊べないのよ、諦めなさい。
ゴウは、今日は病気なのかな?」
とおいらに聞いた。
おいらはなんと言おうか一瞬躊躇した。
その瞬間、ゴウはすごい勢いで
「そう僕は病気なんだ。
お腹も痛いし疲れてて眠らなくちゃいけないんだ」
と、言い放った。
おいら、目がテン。
嘘、つけるんだねえ。
ドアを閉めてから、おいらはゴウに言う。
「今の嘘は、言わない方がよかったと思うよ。
本当の気持ち言う方が、ゴウも気持ちいいと思うけど、どう?」
ゴウはしばらく考えて、
「でも言っちゃったもんね」
と、けろっと言った。
なんて言うかさ。
子供ってしたたか。
うちの子に限って、なんて、絶対言えない。
油断ならない年齢になってきた。
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