二週間下痢が続いている。
普段下痢なんてしないおいらにとってはそこそこの異常事態。
ネットで調べたら腸炎とか大腸がんとか出てくる。
一週間を超える下痢というのは即診察すべきものらしい。
考えてみたら、叔父が癌で死んだのは、今のおいらの年齢だ。
うちは長寿の家系で、米寿くらいは当たり前。
そのなかで叔父が30半ばで死んだのは
天地がひっくり返る大事件だった。
叔父の母である祖母は元より、
曽祖母の嘆き悲しみ様は凄まじかった。
私があの子の寿命を取ったのだと泣き崩れた。
腹痛を訴えて入院し、
胆石と信じて半年で死んだ。
新婚の奥さんとの間には子供がまだなく
それは救いだったとみんなが言った。
当時のおいらは、
生きているうちに子供が抱きたかったのではないか、と
センチメンタルなことを考えたが
今、親になってみて、
死ねない理由は子供だけだ。
叔父に子供がなくてよかった。
マンジロウの子育てはいまいち不安だが、
そういうことではなくて
母親がいないということに、ゴウがどれほど苦しむかと思うと
内臓取り替えるくらいの手術ならいつでも受ける。
頭が禿げる薬だって飲む。
どうせそのうちね、
ばばあ死ねとか言われちゃうんだよ。
でもそれとね、
本当に死んじゃうことは、全然違う。
ゴウが生まれるまでは、なるべく早く死にたいと思ってた。
人間は長生きするとガタがくるし、
家族内でもいろんな問題が生じる。
曽祖母ふたりの死にまつわるいろいろを見たことに加え
祖父母四人がおいらに死に様というものを教えてくれた。
医者に勧められるまま手術を受けたらどうなるか
ばあちゃんが身を持って教えてくれた。
50を超えて癌が見つかったら切開手術はしない、
そう、マンジロウに言い渡したことがある。
あなたはお好きにどうぞ。
でもおいらは、自分の体そのまんまで死にます。
これは今でも変わってない。
けれど。
ゴウのことを考えると、50じゃ足りない。
なんとなく漠然と、子供が親の死をなんとか受けとめられるのは
30以上じゃないかなと思ってる。
いい人生だったよ。
マンジロウには気苦労させられてるけどさ
おかげさまでなに不自由ない暮らし。
ヨーロッパもこんなに旅行できたし、
子供にも恵まれて、
「なんのために生まれてきたのか」なんて考えることもない。
終わることになんの未練もない。楽しんだ。
たったひとつ、ゴウのことを除いては。
病院に行く日、そのまま検査入院で帰れなくなることも想定し
家を片付け、
ゴウのお迎えの計画も立てた。
受診したら……、
抗生物質の仕業でした!
えへ!
思い込みってすごいね!
ハズカチイ!
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