妊娠がわかって、マンジロウに言われたことがある。
「あのね。
俺はね、親に旅行に連れてってもらったこと、ないんだ。
動物園とか、遊園地とか、映画館とか、そういうのもないんだ。
もしかしたら覚えてないだけかもしれないんだけど、
少なくとも写真は残ってないのね」
(・_・;)_・;)・;);)) ナントッ!!
これには驚いた。
動物園に行ったことがない子供なんているの?
幼稚園くらいなら、記憶はないかもしれないが、
遊園地って12歳でも親に連れられていくよね?
記憶に残ってないなんて、考えられない。
「誕生日とかクリスマスもさ、なんにもないんだよ。
誕生日も、普通の一日と一緒でさ、
ああ、今日は誕生日だな、おめでとう、って言うくらい。
ケーキもなかったし、プレゼントもなかった」
∑(=゚ω゚=;) マジ!?
更にびっくり。
マンジロウ父は陽気でお祭り好きな男だ。
なのにそんな祭りをスルー?
うちは貧乏だったからプレゼントはなかったけど、
ケーキはさすがにあったし、お祭り気分だったぞ…。
「一番ショックだったのがさ、
小学校の時、俺の誕生日に、仲のよかった友達が
プレゼントを持って家まで来てくれたんだ。
その日、なぜかオヤジが家にいてさ、休日だったのかなあ。
その子を、追い返したんだよね。
プレゼントとか、そういうことをするな!って怒って」
(; ゚ ロ゚)ナン!( ; ロ゚)゚ デス!!( ; ロ)゚ ゚トー!!!
いやいやいや。
もはやそれ、DVの域じゃね?
おいらの知ってるマンジロウ父からは想像もつかない行動。
でも、マンジロウと父の、微妙な距離感を考えると
納得できるエピソード。
「それってさあ、しつけなの?」
おそるおそる聞くと、マンジロウは悲しそうに首を振る。
「わからないよ。聞いたことないもん」
「その誕生日の話は、なんかよくわからんけどさ。
うち、父親が土日も働いてること多かったから、
動物園とか、お母さんだけで連れて行ってくれたりしたよ?」
「うちは、それもなかったなあ」
………、なんだそれ。
マンジロウ父と母は、多分、不仲だ。
はっきり聞いたことはないけど、
なんだか不穏な感じを受ける。
そういうのが原因なのか?
でもたとえ、夫のことが気に入らなくても、
母親なら子供が喜ぶことをしてやりたいんじゃないか?
話を聞いてる間、
頭のなかがグルグル回ってて、
なんだか怒りのようなものも感じるし、
戸惑いのようなものも感じて、
なんにも言えなかった。
「だからね、俺、夢があるの。
子供が生まれたらね、いろんなとこに連れて行ってやりたいの。
動物園もね、水族館もね、遊園地もね、
旅行もね、いっぱい一緒に行きたいの」
マンジロウは、生まれてくる子供といろんなところにいきたい、
その夢をおいらに話したかっただけだった。
でもおいらはびっくりして、
なんかちょっと泣きそうだった。
マンジロウの「??」な行動は、
この幼児期によるものなんだろうか?
いや、それにしてはまともに育ってる気がする。
これはマンジロウの記憶だから、
両親に確かめてみたら、いろいろと違う事実があるかもしれない。
ぜひあってほしい。
だけど、こういう記憶が残ってるというのは
やっぱり不幸だと思うから、
生まれてくる子とは、一緒にいろんなところへ行こう。
妊娠して、よかった。と思った。
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