実は福島に友達がいる。
すーっかり忘れてたんだけど、震災の一ヶ月後くらいに
「心配かけてごめん、俺と俺の家族は無事」 というメールを受け取って、
大学時代の友人に福島県庁に務めてる奴がいたことを思い出した。
10年くらい連絡とってなかったから、
彼のまめさには頭が下がる思いだ。
まさか忘れてたとは書けないので
「ずっと心配してたよ、よかった無事で。おいらは今ドイツに暮らしてます」
と返事した。わーお、この嘘つき。
すると、びっくりする早さで返事がきて、
しかも電話番号を教えろという。
「なんで?」と思いつつ、一応教えたら、速攻かかってきた。
以後、メール書いたら即返事、おいらの遅い返信にもすぐ返事、という
状態が続いた。
彼は今も県庁に務めているが、
二人の幼い子供と奥さんは、奥さんの実家(関西)に避難。
で、本人は電話でもメールでも、とにかくずっと
「日本にはもう愛想がつきた。ひどすぎる。
なるべく早く俺は家族と海外に移住するつもりだ」
という主旨を繰り返している。
そういうこともあって、おいらと密に連絡を取りたいようだ。
彼は元々、ものすごく海外にいきたい人だった。
語学留学とかもしてた。一ヶ月くらいのやつ。
なのに就職は地元の県庁だったから、意外だった。
商社とか選ぶと思ってた、と言ったら
親方日の丸、堅実なのが一番って言われたのを覚えてる。
彼のストレスはそりゃあ相当なもんだと推測できる。
でも、おいら、だんだん彼のメールが嫌になってきた。
日本、福島、そしてあんまり書きたくないけど、
書かないと伝わらないだろうから書くけどさ、
避難生活をしている人たちやその他もろもろの悪口に終始するからだ。
海外に行きたい行きたいばっかりなんだよね。
そりゃ分かる部分もある。
小さい子供がいるのに、こんな事態になって
なのに行政の無力さというか無策さを、一番近くに感じて
やりきれない、日本なんか見限った、という思い。
だけどさ。
おいらは、なんかね。
どうせ辞めて日本からも出ていくと本気で思ってるなら
福島の子供たちの浴びてる放射線の放置について
県庁内部から行政に反旗を翻してからにしろよ。って思う。
(最近はあんまり報道で観ないけど、当時はすごく話題になってた)
自分の子供はいち早く避難させたんでしょ。
だったら、避難できない子供たちのために、ママさんたちが運動しているのを
手伝ってもいいんじゃないの。
自分は、県庁勤めでも、子供に危険と判断して避難させたんだから
それこそ内部の声として突き上げていけよ。
公務員っていうのは、倒産せずに毎月お給料もらえて
補償も手厚くて、ボーナスもしっかり、それだけの仕事なの?
何かの時には、
公的利益のために粉骨砕身の努力をするということが
仕事上の責任なんではないの?
テレビで、家族の安否がわからないのに
避難所の情報整理をする公務員を見て
泣けただけに、友人のその姿にはがっかりした。
立派な公務員はたくさんいる。
でも友人は、そうではないようだ。
仕事中のはずなのに、すぐにメールは返ってくるし、
仕事の愚痴をこれでもかと書き連ねる。
彼は家や仕事を失ったわけではないけれど
家族と離れ離れになって、精神的につらいだろう。
最初はなんとか励ましていたんだけれど…
おいら、耐えられなくなって、つい、書いてしまった。
「海外では、母国の悪口を言う人は信用されないよ。
独裁政権とか、納得できる状況を除いては。
少なくとも、おいらはそんな人と友達にはなれない」
ぱたり、と返事は来なくなった。
おいらも、いつか思いもよらぬ形で
自分の美学を問われる時がくるんだろうな。
その時に、損得ではなく、周囲の軋轢でもなく
ただ正しいと思うことを貫けるだけの強さを
おいらはもう手にしているだろうか?
それともまだこれから成長しなければいけないのだろうか。
10年以上あっていない大学時代の友人にがっかりされるようなのは
おいらはごめんだ。
それ以上に、息子にがっかりされるような人間にはなりたくない。
早死でもいいからかっこよく生きたい。けど実践はむりだろうな。
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