日本の友達から、夫に愛想をつかした、というメールがきた。
彼女はすっごくややこしい女性なので、
普通の男ではなかなか折り合いをつけられないのだが
3年前に結婚した夫は、
彼女をよく理解している。
おいらはこの夫が好きじゃないのだが
(すんげ理屈っぽいし、話が強引で、穴だらけの論法を押し通す)
こういう男が煙に巻くようにしないと
彼女を御すことはできないだろうな、と納得していた。
しかし今回、彼女は完全にへそを曲げてしまった。
事の発端は、彼女の
胃痛だった。
ある日、彼女は体調が悪かったが、
夫と共通の友人との約束があり、食事に出た。
3人で食事を終え、彼女の不調はピーク。
帰りたくて仕方がなかったが、
夫も友人ももう一軒行こうと言う。
彼女は断ろうとしたが、強引な友人だったらしい。
実は、彼女には乳児がいて、
実家の母親に預かっていてもらっていた。
夜に飲みに行くのは出産後初めて。
友人も夫も、彼女に羽を伸ばしてほしかったのだろう。
しぶしぶ二軒目のバーについていった。
そこで一気に悪化。
彼女は吐き気と痛みで脂汗を流し、
しゃがんだまま動けなくなった。
「救急車を呼んで」
と息も絶え絶えに夫に伝えると……。
「あのカスなんつったと思う?」
と彼女は書いていた。
「えっ、本当に呼ぶの? って言ったんだよ!!」
はい、そうです、これが彼女の怒りの原因。
渋った夫の携帯をひったくり、友人に投げつけて
「119!」
と叫んだそうです。
つまりその友人が救急車を呼んだってわけ。
そのまま入院、2日間で退院。
急性胃炎だったんだって。
なんで彼女がそんなに怒ったか、分からない人いる?
その人はねえ、
大人なんだね。
おいらみたいな恋愛ジャンキーなら、
すっごく理解できるんだよな、彼女の思考回路。
あ、先に言っとくけど
理解はするけど、それがまともな考え方だとは思ってないからね。
つまりね。
「こんなに苦しんでいる私を見て、救急車を呼ぶのを躊躇する」
のは、愛がないから、なわけなのよ。
愛しているなら
私が少しでも苦しんでいれば動転するのが当然。
私が「大丈夫よ」と言ったって
自発的に救急車を呼ぶのが夫(とか恋人)。
そもそも、救急車を呼ぶのって、大抵の人は初体験で、
やはりその決断は本人にも難しい。
そういやおいら、10代で七転八倒の胃痛に襲われ
母に泣いて救急車を呼んでくれと言ったことがあるけど
断られたっけ…
即、拒否、だったな…
あの時の痛みは生涯振り返っても一番激しく
救急車に値するんじゃないかと今でも思うけど
それでも自分で呼ぶほどではなかったもんな。
それくらい救急車を呼ぶという決断は難しい。
とにかく、愛される女としては
自分の判断で救急車を呼ぶよりも
男が動揺して勝手に救急車を呼んじゃうほうが
断然かっこいい展開なんである。
そういうわけで、
彼女は夫の行動に猛烈に怒っているわけだ。
メールには
「いつも偉そうにしてるくせに
一大事にまともな判断もできない」
「入院してる時、子供を置いて外出した。
病室に子供がいて同室の人に申し訳なくて病状が悪化した」
など、いろいろ怒りの理由を書いていたけど、
おいらはやっぱり、夫が自分より体面を優先したって感じたのが
原因だろうと思う。
マンジロウにこの顛末を聞かせてみた。
「そりゃあ、どれだけ痛いかなんて本人にしかわからないんだから
彼女の言ってることは無茶だよ」
なるほど、おいらは自分で救急車を呼ぶしかないらしい。
ドイツの救急車は有料だっけ?
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