おいら、大学生の時、アルバイトのひとつに家庭教師を選んだ。
担当する生徒はほぼ全員成績が伸び、志望校をワンランク上げるのはざらだった。
(あ、ちなみに中学生ね)
当時のおいらは、今よりずっと頭でっかちで、
「一週間に一度、たった二時間で成績が上がる授業なんてムリ」
とはっきり考えていた。
お金を貰う以上、やはり成果を出したい。
必ず成績が伸びる方法はないもんだろうか、と真剣に考えた。
おいらの出した結論はこう。
「家庭教師がいない時間も、本人に頑張って勉強してもらうしかない」
↓
「
あいざぁ先生大好き、先生が辞めたらいや、
私の成績が落ちたら、ママは先生を辞めさせちゃう、そんなのダメッ」展開を狙う。
家庭教師の二時間、おいらは生徒のモチベーションアップだけ狙った。
随分エンターテイメントな授業だったと思う。
予想はたまたま当たって、家庭教師協会から斡旋された生徒の成績があがり
そこから口コミで依頼が引きも切らなかった。
正直に告白すると、成績が上がらなかった子がひとりだけいた。
彼女は勉強をするという習慣がついていなくて、
どうしても普段に勉強することができなかった。
信頼関係も築けなかった。
だからおいらの作戦は100%うまく行くというものじゃない。
今でも交流のある生徒がいる。
ハナちゃんはその一人。
もう社会人だっていうのに、恋愛相談とかしてくる。
おいらみたいな恋愛ダメ人間に相談って、あなた。
育て方間違ったのかしら。
ハナちゃんは地元の名士の家に生まれた。
玄関から入っただけでも、引き締まった雰囲気のする家だった。
おかあさんは非常に社交的で優しかったが、
どうやらおとうさんが相当怖い人らしい。
ハナちゃんは中学3年生、多感なお年頃である。
ハナちゃんは元々優等生だったので、勉強はあまり教えなかった。
それよりも精神的にすごく不安定なのが手に取るようにわかったので
毎回「お悩み相談室」だった。
好きな男の子のこと、友達とのケンカ、母親との衝突、父親への嫌悪感。
毎回同じような話だったけど、他人に話すことでハナちゃんはラクになったみたい。
勉強なんて、テスト前にちょっと教えるくらいだったのに
「教え方がすごく上手だ」っておかあさんには言ってくれてた。
おまけに、テストの成績もうなぎのぼりだった。
ケアレスミスが減ったこともあるし、
おいらのちょっとしたテスト対策テクニックを非常にうまく吸収してくれた。
元々が頭のいい子なんである。
その後、ハナちゃんのおかあさんとも仲良くなった。
おいらの結婚にお祝いをくれたし、細く長く関係は続いている。
ほんとに陽気な人だから、節目のたびに電話をくれる。
ドイツに来ることになった時も、マンジロウのこと、根掘り葉掘り聞かれた。
ハナちゃんはおいらの母校に進学し、大学は国立大に受かった。
高校生になってからも、請われてしぶしぶ家庭教師を引き受けたが
やっぱり難しすぎて、おいらには教えられなかった。
当然、毎回お悩み相談室である。
ハナちゃんは頭も良く、顔もかわいい。
でも選ぶ男はイマイチだ。
例えば、自分にすごく甘い男とか、二股平気な男とか、マザコンとか。
高校生の時からそういう傾向はあった。
おいらが勝手に分析するに、おとうさんが怖いからかもしれない。
優しい男に弱いのだ。
その優しさが、ハナちゃんに対するものではなくても、
例えば男が自分自身に優しいだけでも、二股が後ろめたくて優しくても
優しければなんでもいいんである。
最終的に、ハナちゃんは国立大学の院を修了し、中学校の先生になった。
反対したよ、おいら。
ハナちゃんは、学校の先生になる能力も資格もある。
でも学校の先生として、幸せになれる気がしなかった。
ハナちゃんはすぐブレるし、弱いし、流される。
万引きした生徒を、冷静に引き取りにいける性格ではない。
大変長くなりましたが、このハナちゃん、結婚話が上がってます。
それで一家大騒動。
そのことを書くための、長い長い前置き。
んー。次回に続く。
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