マンジロウ父はおいらのことを気に入ってる。
電話をしたら、すっごくうれしそうに話をしてくれる。
いつもニコニコ、おいらに気を遣ってくれる。
でも、もしおいらが「子供ほしくない」って言った瞬間には
三行半叩きつけられて追い出されること必至。
マンジロウ父は、自分の家系をこよなく愛している。
専門業者に頼んで家系図を作ったり
お墓を新調したり(新調っていうんだろうか)
法要も欠かさない。
33回忌以上の法要は初めてみたぞ、おいらは。
つまりおいらは、大切な跡取り製造機なんである。
しかし、言わせて貰うなら
そんなに大切な御家なんだったらば
もっと子供産んどけっ
おいらは子供いらないと思ってるわけで。
でもさすがにマンジロウ父にそれを言う勇気はない。
今住んでるアパートのお隣に、あかちゃんがいる。
いつも泣き声が聞こえてて、
ママはげっそり。綺麗なブロンドの髪も乱れがち。
この前、エレベーターで一緒になった。
彼女は洗濯にいく途中だったみたいで、一人。
「あかちゃん、大変だね」と声をかけると
「ええ、大変だわ。でもね。
とっても素晴らしいのよ。
私は人生で一番素晴らしい経験をしているわ。
あなたもきっとすぐわかるわ」
………。
それはその通りなんだろうけど、
その憔悴した姿で言われるとちょっと怖い。
知り合いの日本人女性からは
「はやく産みなさいよ、ドイツで産むといいわよ。
ドイツはとっても子供を育てやすいから。
絶対ドイツがいいわ、だからはやく産みなさいね。
だめよ、そのうちなんて言ってたら
気がついたら、なかなかできない、なんてよくある話よ」
と言われる。
次からは
「今、不妊治療中なんです」って言おうかな。
子供は産んだ方がいいと思う。
子供はかわいいと思う。
でも、どうしても、ほしいと思わない。
できれば欲しくないと思う。
おいらは4人兄弟で育ったから、
子育ての大変さは、すでによく知っている。
特に妹は思春期でグレたので、もうえらい大変だった。
もし子供を産んだら、
苦難も多いけれど嬉しいことも多いだろう。
おいらの母親は「もっと産めばよかった」と言ってる。
なんだかとりとめもない事書いちゃったけど
とにかく、つまり、
おいらに子供を産めと言う話をするのは止めてほしいわけだ。
産め、といわれることが嫌なんじゃなくて
「本当に欲しくて、でもできない人にも
こんな無神経なことをいうんだろうな、この人は」
って毎回思うたびにぐったりとするのが嫌なんだよね。
あと、「正直、ほしくないんですよね」って言ったら絶句するのもやめてほしい。
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