世の中は、釣った魚に餌をやらない男性が多くいるというのに
マンジロウは長期出張のたび、おいらに土産をくれる。
おいらを愛してやまないのではなく
買い物が好きなんである。
マンジロウは、すぐおいらを理解したようなことを言う。
あいざぁはこういうの好きだろう、とか
あーあいざぁの趣味だね、とか
まあそのようなこと。
この言葉はいつも耳障りなのだが
彼は好んでこう言う。
マンジロウの買ってくるものは、必ず高額なので
おいらとしては、その一点で気に入らない。
悪くないものだとしても、
その金額出すならいらねーわ、と思うものばかりだ。
もう金額を聞くのもやめてしまった。
今回のマンジロウのアメリカ出張土産は、
ゴスロリ全開のフリルつき黒い日傘。
買うか…こんなん。
まったくおいらの趣味じゃない。
いわく、非常に美しい傘だと思った、と。
たしかに、おいらは以前傘が欲しいといった。
それは雨傘である。
ドイツでは、日傘をさす風習はない。
周りがさしていなくても、あいざぁがさしたいなら
させばいいのだ、とマンジロウは言う。
いやだから、さしたくねーんだよ。日傘を。
子連れで日傘さしてたら邪魔で仕方ないし
ドイツ人に「雨降ってないけど?」って話しかけられるのもやだし
しかも黒フリルって無理なんですけどおいら。
服に全然合いませんから。
ものすごく嫌そうな顔で「ありがとう」と言ってしまい
マンジロウも不機嫌に。
フリルのせいでやたらかさばるし、
忘れた頃に捨ててしまおう。
っていうかさ
なんでおいらにこれを買ってきたの?
しかも絶対高いんだよ、この傘。
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