マンジロウがいかに使えないかという話を何度も書きましたが
それでもまだやらかしてくれるから、すごいよね。
本当に仕事できてんのかな、彼。
実は窓際族なんじゃないの?
窓際族ってさすがに古すぎるか、今はなんて表現するんだろう?
また話がずれた。
だからマンジロウの話だって。
土曜日、少しはなれた広場に市が立つ。
肉屋さんが、飼料にちゃんと配慮してて
(詳しいことはよくわからないが、そういう看板だしてる)
ハムやベーコンも味きつくなくて、
おいら一人で買い物にいっても
「ゴウの分あげる」ってハムくれるので
とりあえずここと、
りんご屋さんには必ず行く。
ドイツ在住ではない方のために注釈。
ドイツの肉屋は、どこでも、
子供がいたらハムを一枚くれます。
そしてりんご屋は、りんごを巨大な木箱で
売っています。
基本はりんごだけ(数種類、季節で変わる)ですが
梨やブルーベリーやプラムや、
その季節の果物も売っています。
マンジロウは車で待機(大抵二重駐車だから)
おいらとゴウは一緒に買い物にいくんだけど、
ゴウがいると、やっぱりはかどらない。
でもハムがもらえるもんだから、
ゴウは絶対ついてくる。
先週は、ゴウのお絵かき机を買いにいきたかったので
市場の買い物は早く切り上げたかった。
なのにマンジロウがちっとも起きなかった。
この時点で使えなさ80%だ。
ところが運良く、正規の駐車スペースが空いた。
これはラッキー!
「おいらりんご買ってくるから、
マンジロウはゴウと豚のひき肉買ってきて。
ハムは絶対くれるから、買わなくていいよ」(せこっ)
と、手分けすることに。
肉屋、人気なので結構並ばなくちゃいけないの。
ふと、マンジロウも在独5年だが、一応、と思い
「ひき肉はHackfleischハックフライシュ、豚だからSchwein ね」
マンジロウの目が、
泳いだ。
あ、やばいかも、と思って
「Schweine Hackfleischシュバイネハックフライシュだよ。
こんなね、パッケージに入ってるから。
みたらすぐわかるから。1個ね」
と念押しした。
こういう時、おいらはいつも、最悪の事態を想定する。
最悪、どんなことが起こるだろう。
…牛ひき肉かもしれない。
それ以上のことは考えつかない。
でも、まあ、ねえ、
だってもう立派な大人ですよ。
ひき肉くらい買えますがな。
5年も住んでる国ですよ。
5年も使ってる洗濯機の洗剤を入れ間違える男でも
ひき肉くらい買えるだろう。
マンジロウは、いつもそうなのだが、
不安は口にせず、
わかった大丈夫、と言った。
その言葉に何度裏切られたか。
でも今回は裏切られようがない。
例えば言葉が通じなくて、
違う肉を出してきても
見るからにひき肉じゃないんだもん。
バラと肩ロースなら難しかろう。
ひき肉とスペアリブを間違える人間がいるか?
不安を押し殺し、
りんごを買い求め、ぶどうも買い、
そうだりんごジュースもなくなるわ。
他の店で緑色のかぼちゃを買い、
じゃがいも屋さんでじゃがいもを買い、
重い荷物を下げて車に戻ったら、
もうマンジロウは戻っていた。
ゴウはハムを食べている。
後部座席に、肉屋のビニル袋。
…………でかい。
ひき肉150g程度のパックとは思えないでかさだ。
もしかして、美味しそうなハムでも買ったのか。
最初にそう思った。
マンジロウは消費期限を考えず、
大量にものを買う。
あーやっぱりおいらが買いに行くべきだった、
とビニル袋を開けてみると、
もうびっくり。
Schweinshaxeシュバイネハクセ!
しかも2個!
人間、あまりに驚くと声が出ない。
そもそもね、
あの店でシュバイネハクセを見たことがないのよ。
めっちゃでかいやん。
誰が食べんねん。
なんで2個もあんねん。
てか、おいら、シュバイネハクセ嫌いやしね。
シュバイネハクセが何かわからない人はググってください。
ググるの面倒な人は
「はじめ人間ギャートルズの肉みたいなやつ」
と理解してください。
人間は、驚くと声が出ないが、
驚きすぎると笑う、というのを経験した。
笑い出したおいらに
「あれ、なんか変?」
とマンジロウ。
「変すぎるわ! Hackfleischはどこやねん」
この時点では、
おいらは、ひき肉を購入後、
シュバイネハクセに興味を持って、買ってしまったのだと思っていた。
が、そうではなかった。
マンジロウの顔が能面のようになった。
(自分のミスを必死で隠そうとする時の表情デス)
「あー…、そっか、ハックフライシュだった、っけ」
なんじゃその90年代ドラマみたいな口調。
「は? ひき肉って言ったでしょ?」
「うーん、そう、だったね。
肉屋にいったら、
俺、シュバイネハクセって、言ってた」
なんでやねん。
ツッコミどころが多すぎて
どこから整理していいのかわからない。
「え? つまり、ひき肉は?」
「買ってない」
「シュバいネハクセだけ、買った?」
「そうなるね」
「え、どうして?」
「まあ、口が滑ったってとこかな」
どうですか皆さん。
この使えなさ200%野郎は。
「待って待って、
まあ、間違えてシュバイネハクセと言ってもよ、
ひき肉じゃないって、わかるでしょ?」
「うんうん、うん。
シュバイネハクセって言ったら、なんかこう、
奥の冷蔵庫みたいなところから出してきて
特別な感じがしたんだよね。
ああ、あいざぁはこれが欲しかったのか、ってね。
で、何個いるかって聞かれたから
じゃあ2個で、
ということになったんだよね」
笑った。
おいら笑ったよ。
金持ってるだけにタチが悪いわ。
初めてのおつかい大失敗。
「ひき肉って言葉は?」
「うん、もう、忘れてたね」
ね、マンジロウは謝らないんですよ。
「食べないんだったら
おとなりさんにあげたらいいよ」
と訳のわからん提案をしてきたので
本気で絞め殺したくなりました。
マンジロウは、ミスを犯しても
それをリカバーできるアイデアを出せば
謝らなくていいと考えてます。
日にち間違えてホテルを取っても、
おいらの誕生日を忘れていても、
おいらの観劇の予定日に出張入れても
リカバーできたら、謝らなくていい。
でもね、リカバーなんてできないんだよ。
ホテル代180ユーロは捨て
おいらは自分でレストランに誕生日と申告して予約し
観劇は違う日に行けと言われてもムリだしね、
それでリカバーできたと思うのがおかしいじゃん。
マンジロウがあんまり謝らないので
おいらも謝らなくなりました。
だって不公平でしょ。
そしたら言われた。
「え、それだけのことして謝らないの?」
ああ、もう、うち不仲ですから。
毎食味の素仕込めば高血圧で死ぬかしら。
塩より化学調味料の方が血圧によくないって聞いたんだけど本当だろうか。
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