夕食を作っている時、
ゴウが激しくぐずった。
どうも具合が悪いらしく、おなかが痛いと騒ぐので
マンジロウに相手をするよう指示を飛ばした。
しばらくしてマンジロウがキッチンにやってきて、
自分が調理をするからゴウのところへ行ってくれと言う。
普段ならマンジロウにお願いなどしないのだが
夕方外出していて戻りが遅れてしまい
夕食の時間に遅れているという焦りがあった。
早くゴウに白菜と鳥肉のスープを飲ませて寝かせたい。
白菜のスープはもう少し煮込むだけだが
付け合わせの中華風サラダを作りたい。
おいらはこう言った。
「レタスを五枚洗って包丁で細切りにしてくれる?」
どこにも勘違いの要素がない完璧な指示だ。
レタスの量も、洗浄も、方法も、 明確。
千切りなんて専門用語も使っていない。
おいらはゴウをなだめすかし、
落ち着いた頃合いでキッチンに戻った。
マンジロウはまだ包丁で切っていたが
こんなのは予想範囲内。
むしろ洗ってくれてるだけでいい。
マンジロウはおいらにすぐ気づき
大変疲れたという様子で場所を即譲ってきた。
まな板には、なぜなんだろう。
白菜の、細切り。
呆然とするおいら。
やったった感が溢れるマンジロウ。
さすがの。
さすがの事なかれ主義のおいらも、言った。
「レタスちゃうやん」
マンジロウは、近くにあったレタスに手を伸ばし
そのレースのようなふわふわの葉に触れて
「あ」
と言った。
おいらが思ったのは
どうして、
どうして何度も何度も予想を裏切りられているのに
まだこの男に期待するのだろうか、という
おいら自身への疑問だった。
おいら、ちょっと頭悪いんちゃうか?
マンジロウがムカつくことすると更新が早まる。
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