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お育ちのいい夫にてこずる妻日記。エコだったり毒舌だったり。

2024-04

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ハナコさんの病は、とてもゆるやかに進行していった。
進んでいるようには見えなくても、
徐々に、本当に少しずつ、ハナコさんの脳を狂わせて行く。


広い一軒家に一人暮らし。
毎月姉夫婦が訪れるのだが、
いつもと同じくきちんと整頓されていて、
減らない薬以外は、おかしなところはなかったという。


ある日、ハナコさんと姉夫婦が旅行に行こうと、
駅で待ち合わせることになった。
ハナコさんちは、駅からバスで20分。
そこから二駅先まで出てきてもらうことにしたのだ。

でもハナコさんは約束の時間にこなかった。
今まで、何度も繰り返してきた待ち合わせ。
一時間探し回り、
待ち合わせの駅の、違う出口でようやく出会えた。
待ち合わせ場所だけでなく、時間も間違えていたようだった。

ハナコさんは、姉夫婦が間違えたといって
普段からは考えられないほど怒り、
旅行はキャンセルすることになってしまった。


それからしばらくして、
ある奇行が始まった。


ハナコさんちの冷蔵庫は、大きい。
もともと3人家族だったとしても、それでも大きすぎるくらい大きい。
それが、食材でぱんぱんなのだ。
同じものがいくつも出てくる。

亡くなっただんなさんの好物である漬物や
義兄の好きなヨーグルト。

冷凍庫は二段あるのだが、
どちらも冷凍ご飯で溢れている。

ハナコさんは、だんなさんが亡くなったこと、
自分の息子が10年以上前に家を出たことを忘れてしまって
ご飯を炊きすぎてしまうのだ。

あまったご飯はもったいないから、ちゃんと冷凍する。
だけど、冷凍してあることは忘れてしまって
また沢山炊いてしまうのだ。


姉が数日休みが取れて、
ハナコさんちに滞在していた時。
ハナコさんがスーパーに行かないよう、ずっと見張ってたらしい。

「あれ、お義母さん、どこいくんですか?」
「うん、スーパー」
「でも、冷蔵庫に食材たくさんありますよ。
あれで何か作りましょう」
「あ、そっか。いっぱいでしょう、冷蔵庫。私、あれ嫌い」

という会話を、一日何回も繰り返すのだそうだ。

最初のうちは、そうやって言うことを聞いてくれるのだが
夕方になると
「もうスーパーにいかないと、夕飯に間に合わない!」
と騒ぎ始める。
冷蔵庫にあるでしょう、ああ、そうかしら、じゃあスーパーにいってくる。
いやいや、冷蔵庫に。ああ、そうかしら、じゃあスーパーに。
延々繰り返される会話。

なんとか納得させても、
目を離したスキに家を出て、スーパーに行ってしまう。
追いかけて、一緒に行くと、
大量に物を買う。

要らない、と何度言っても、
一度は棚に戻すのだが、また手に取る。


そしてレジで

「わあ、こんなにたくさん買って。誰が食べるの?」

とコロコロ笑うのだそうだ。


ハナコさんのことで、姉が初めて、泣き言をいった。


「アルツハイマーの介護は、私にはできない」




~4につづく~



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おいらにもできない。

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無題
えーん辛いよーーー。
あいざぁさん、うちの姑っていうか実の親も
なったらどうしよう。。。
もうプロに任せるしかないよー。
徘徊とかもさ、寝たきりと違うから力もあるしね。
何よりも本人のプライド、自尊心が介護の妨げになるよね。。。
うー難しい。
Haeschen URL 2009/04/02(Thu)18:41:45 編集
おいらもプロにお願いしたい
そうなの!プライドってねー、ほんと難しい!なくなったらなくなったで、困るもんだし。それで若く保たれてるっていう面もあるからね。
徘徊が始まったら、もうね、家族ではムリだと思う。実はこの話、まだまだ続くんだけど、ハナコさんみてたら、あ、これはムリなんだって思ったもん。大切なのは、準備だよHaeschenさん!ある程度の年齢になったら、元気でも介護保険を申請して、ケアマネージャと連絡が取れるようにしておくのが、重要!
【2009/04/02 21:26】
無題
アルツハイマーっていうのは痴呆症と同じなんでしょうか?東城百合子という人が食事療法によっていろんな病気を治癒できるという本を出してるんですよ。そこにも痴呆症のことが載ってました。ちょっと長いんでここには書けないけど、興味があったらメールくだされば本からコピーして送ります。原因は’手足や脳の末端まで血液が流れなくなり、栄養や酸素も届かないから脳細胞が死んでいくのが早くなる、、’とありますね。

お姉さん、覚悟の上での結婚だったとは思うけれど、現実は想像以上だったんでしょうね。うちもね、息子が障害児で、毎日何回も同じことをくりかえさないといけないところなんか、そっくりです。自分の子なんでとてもかわいいけれど、正直ストレスもたまります。お姉さんも自分にストレスをためないように、ハナコさんの病気とうまく付き合う感じで介護ができるようになればいいのだけれど。
masami 2009/04/02(Thu)22:56:35 編集
なんでこんなに優しくなれるんだろうか
masamiさん、親身なコメントありがとうございます。姉に薦めてみます、その本。姉は料理できないんでね…でも食事は大切ですよ、ほんとに。
masamiさんも日々がんばっておられるんですね。すごいわ…。おいらみたいなへなちょこは、圧倒されます。
【2009/04/03 15:36】
無題
あいざぁさん、こんにちは。
お体の調子はいかがですか?
おじい様、おばあ様の癌のお話から、アルツハイマーのお話と、読むのが辛いです。。
おばあ様、あいざぁさんと赤ちゃんが側にいることで、少しでも気持ちが和らぐといいですね。
お姉様が、結婚する日までずっと泣いていたと読んで、心が痛みました。
とても不安でしたでしょうね。。
結婚当初は元気でも、事故や突然の病気で、結婚生活がどうなるかなんて、誰にもわかりませんよね。

以前読んだ本なのですが、とてもしっかりして、皆のお世話をきっちりしていた優しいお母さんが、突然寝たきりになり、人に全てお世話してもらわなくてはならなくなったそうです。
本の著者は「こんなに素晴らしい母が、何故こんなひどい目に遭わないといけないんだ」と神様をうらんだそうですが、後になって、そういう状態になることで、人にしてあげることと、人にしてもらうことのバランスを人生の中で取ったんだということに気が付いたそうです。
認知症の方の症状は、今まで耐えてきたり、我慢してきたこと(自分では意識していなくても)の裏返しなのかもしれませんね。
私も、自分の両親や主人の両親、主人がそうなった時、どこまでお世話できるのか、想像もできません。
主人の父は、昨年突然寝たきりになり、自宅介護で母が看ています。先日の一時帰国で、介護の現実をとても身近に感じました。
(長々とすみません。)
Maki URL 2009/04/03(Fri)05:08:24 編集
あああ。
意外と、と言っていいのか、もう介護っておいらたちの身近にある問題なんですね。自宅で寝たきりの介護って、大変だと思います。そばにいられないMakiさんもつらいですよね…
この話をブログで書こうと思ったのは、アルツハイマーってものの現実に圧倒されたからです。おいら、こんなの知らなかった!って思いました。いや、知識で知っていても、実際に(姉が)経験してみると、とてもじゃないけど、介護なんてできない!と…。
【2009/04/03 15:36】
そこから
学ぶものって。。今元気な私たちなのかもしれないですね、、(あいざぁさんの記事読んでね)
健康なんて誰にも約束されていないし。。そうならないなんてもちろん保障ないし。。どう老いていくのかどう人生の最終章を生きるのかホントいろいろ考えました。ありがとう・・/
みどりむし URL 2009/04/03(Fri)07:37:03 編集
選びたいよね
自分の最期が選べたら良いのにね。認知症だけはやだな、おいら。本人も周囲もつらすぎる。
この話を書き出した理由は、知識と現実のギャップがこんなに大きいのか、と思ったからでもあります。「本人はわかってないんだから、優しく何度でも、同じ問いに答えなくちゃ」って、昔は思ってましたが、そんなのムリ!言ってきかせることができないんだもん。スーパーにいくの、止められないんだもん。恐ろしすぎる現実を、書いておかなくちゃ!って思いました。
【2009/04/03 15:39】
無題
はじめまして
いつも楽しみにあいざぁさんのブログを拝見しています。
私の父もハナコさんと同じようにアルツハイマーで、プロの方に頼るのは嫌だと言っています。
同じことを繰り返されるのは、介護する側としてはとても忍耐のいることなので、プロの方に頼れたら本当に家族は安心できるんですけど・・・。
このお話はまだ続きがあるみたいですが、ハナコさんにとってもお姉さんご夫婦にとっても良い介護方法が見つかっていたら良いなと思います。



しずか 2009/04/03(Fri)10:40:44 編集
はじめまして
しずかさん、読んでくれてありがとう。
お父さん、アルツハイマーですか。つらいですね、しずかさんも、お父さんも。
この話はまだまだ続きますが、おいらが最終的に書きたいのは、準備しておこうね、ってことなのです。ハナコさんはデイサービスどころか、介護保険の申請も拒否。それでもなんとか申請しておかないと、ある日突然、途方に暮れると思います。
介護保険だけでも申請して、ケアマネージャと話ができるようにしておくのがいいと思います。
【2009/04/03 15:42】
なける。
お姉さん大変ですね・・・。
見てて泣けてくる。15年前を思い出します。
私もアルツの介護が本当に大変だということは身をもってしっておりまする。

私も母方の祖母が70代でアルツになり、結局は10年ほどで亡くなったんですが。

あるとき、田舎へ母と姉と帰ったら祖母が変で。どう変かというと、あいざぁさんの話にもあった「同じ言葉を何度も繰り返す」だったのですよ。
20回というか一日中、「ぺぺ、いとこのあーちゃんは、おもらしなおったのかい?」と聞き、「いやいや、ばっちゃん。あーちゃんはもう大学生になるし、もー治ってるよ。」と私と姉でなんども返事してました。

祖母がアルツになって一番大変だったのは、老々介護をしていた祖父。祖父は祖母の介護に疲れきって最後は肺炎で亡くなってしまって。
遠いからプータローの時に一ヶ月くらい祖父のところに住み込んで介護を手伝っていたけど、近所に住んでいた叔父夫婦や娘(3人もいた)は介護を祖父に任せっきりで、手伝いに来るなんてほとんどなくて。一ヶ月いる間に一度だけシャコ持ってきた、そんくらいで。歩いて5分くらいの所にすんでるのにね。手伝ってた頃には徘徊もするし、ウンコもばらまいてたし、叔父の家族は介護は出来ないと考えていたんでしょうね。

祖母のアルツのきっかけは、その叔父夫婦の娘達の世話から手が離れた事でした。
叔母が精神を病んでいたので、子守を祖父母がしていたんですが、みんな成人してしまったのです。しかも、叔母が嫌がるので子供達はその後あまり祖父母の家に行かなかったらしい。

と、かなり不幸なカンジなんですが。
じっちゃんもばっちゃんも死んで楽になったんじゃないかと私は思ってます。

あいざぁさんの話と照らし合わせても、アルツ発症てきっかけがあるんだなあって思いました。
でもって、すごいきっちりした人がなる。
ハナコさんもキレイ好きできっちりした人に見えます。うちの祖母もキレイ好きできっちりきっちりしてました。お風呂からあがって着替えると、外でんしゃい!と祖母に言われ、外で髪の毛ふいてたw 毛が落ちると言われて。。

どうしてそういう人がなるのかわからないけど、ふと思えば精神の病もそういう人がなりやすいですよね。それと同じなのかなぁ。


もはやキッカケを考えても無駄な話なのですが^^;
そんなわけで、じっちゃんは徘徊が始まって3ヶ月くらいでばっちゃんを病院にいれました。
じっちゃんの言うことだけは「ハイハイ」と聞いてくれてたので嫌がることなく病院に入ってくれました。

お姉さんはどうするのでしょうか?
ハナコさんは素直に言うことを気かなそうですが・・・

続きが気になりますなぁ。
お姉さんが心配です。

長いコメントで失礼しました~~
ぺぺろみあ URL 2009/04/03(Fri)12:19:58 編集
おいらもなける
なんでなんで、そんなしっかりしてて、人の為に尽くして、優しくて温かい人がこんな病気になっちゃうんだよ~~
おいらつらい…
ぺぺろみあさん、偉すぎ。一ヶ月とか、住めませんよ、普通。だけどその状態の親をほうっておくって、その叔母夫婦、どういう人間?
介護できないって、そりゃその通りだけどさっ、だからってじいちゃんだけに押し付けてどうするのよっ、ああ、怒りが…
ぺぺろみあさんが一ヶ月そばにいてくれたことが、救いです…
【2009/04/03 15:47】
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プロフィール
HN:
あいざぁ
性別:
女性
自己紹介:
ドイツ在住、細々とライター業。
海外転勤につられて、まんまと策略婚。
夫との育ちのギャップに窒息寸前。


夫:マンジロウ。日本人だがアメリカ人的思考。
息子:ゴウ。幼児。

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