12月の夜に雪が降ると、思い出すことがある。
数年前の夜、家族で車に乗っていた。
雪が降っていて
「今年はホワイトクリスマスになるかもね」
なんて言っていたはずだから、多分、クリスマス数日前だったんだろう。
交差点で赤信号に捕まった。
雪が降ってて、道路は混んでいた。
赤いテールランプが、なんとなくクリスマスっぽかった。
車が停車した瞬間、警察がわっと出てきた。
十人以上いたと思う。
飲酒運転の取り締まりだろうか、と思いながら、
なんとなく緊張したのを覚えている。
ノックされて、助手席の母が窓を開けた。
父は車内灯をつけた。
警官は鼻が真っ赤で、吐く息はとても白かった。
「3日前、この時間帯にひき逃げがありました。
目撃されていませんか」
警官はビラを母に渡した。
おいらはそれを受け取り、きょうだいで見た。
現場が二つ載っている。
「一日に二件もひき逃げがあったんですか?」
と、おいらは聞いた。
「いいえ、ここではねられ、3キロ先まで引きずられ、
そこで発見されました。
載っている現場ははねられた場所と、発見場所です」
被害者は90歳のおばあさんで、死亡していた。
「絶対に見つけなくちゃいけないんです。
どんなことでも、心当たりがあったら連絡をください」
警官はそう言って、
青信号になる前に、違う車へ向かった。
おいらは悪いことしてなくても警察にはなぜだか怯える小市民。
不祥事も続いていて、「警察なんて」と思ってた。
でもこうやって一生懸命、
雪の降る夜に目撃者情報を探してる警官もいる。
雪の中、「寒い寒い」と歩きながら
時々あの警官を思い出す。
あの人たちは、もっと寒かっただろうか。
それとも正義感に燃えて、寒さを感じなかったんだろうか。
あの犯人が見つかったのか、おいらは知らない。
でもきっと見つかったと思う。
世の中はそういうふうにできてると、思いたい。
つーか、めっちゃ寒いんですけど、ドイツ。去年より圧倒的に寒いぞ。
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