☆なれそめ1~3の続き☆
マンジロウ父が連れて行ってくれたフレンチは、
本物の大人の店だった。
山手の裏道にある、ちいさなレストランなのに、
ウェイターが常に店内に気を配っていて、
しかもそれがさりげない。
サービスに感動したのは、初めてだった。
それに料理も、素晴らしかった。
フレンチにはさほど興味がないおいらが、
皿まで舐めたいと思ったほど。
料理が美味しいと、機嫌もよくなる。
ちょっと引き気味だったマンジロウ父に対しても
「大人の遊び方を知ってる人なんだなあ」と
なんか良く見えてくるから不思議だ。
そして、マンジロウのトイレタイム。
マンジロウ父は待ってました、とばかりに体を乗り出して
「この間は先走ったことを言ってごめんね、
気を悪くしてない?
でも私は本気だから」
と言った。
決して譲らない男、マンジロウ父。
ある意味、立派。
「実はあの後から、私もいろいろ考えたんです。
ちょっと、前向きに考えてみようかと…」
とおいらが言うと、マンジロウ父の目が輝いた。
あれだね、人間って、本当に目が変わるね。
怖かったよ、おいら。
食われると思ったね。
マンジロウ父はワインが進み、
とうとうマンジロウのいる場で、こう言った。
「あいざぁさんに嫁に来て欲しい」
Σ(- -ノ)ノ エェ!?
だから早いって、マンジロウ父!
しかし実はマンジロウはこの時、
父親が本気でおいらを気に入ってる事に衝撃を受けていた。
今まで何人か女性を紹介したが、
そのたび、はねのけられてきた。
(だから日本人じゃないとダメなんだってさ。香港人じゃダメなの)
一緒にいて楽しいな、と思っていたあいざぁという存在。
しかし恋をしているわけではなかった。
(今回、なれそめを書くために本人に確認しました)
父親は、ただ息子に結婚してほしくてこんな行動をしているのではなく
このオフィシャルな場でこの発言をするということは
本気であいざぁを気に入ってるのだ。
そしてマンジロウは思った。
…(逢わせてきた)他の子と何が違うんだろう?
(だから国籍だってば)
この時を境に、
マンジロウはおいらに対する考え方を少し変えた。
追い討ちをかけるように、
マンジロウ父は、息子に毎日結婚をすすめる。
マンジロウ父は外資系企業で働いているので、(日本勤務のみ)
ヨーロッパの情報も手に入る。
「ドイツはアメリカと違って、土日は店が閉まるんだぞ!」
「お前のいたカリフォルニアみたいに、
簡単に日本食は手に入らないんだ!」
「料理上手の嫁さんなしに、一人暮らしなんて、栄養失調になるぞ!」
みたいな感じで。
そしてマンジロウ母の前で、
いかにあいざぁが可愛くて頭が良くて素晴らしいお嬢さんかを語る。
(このへんは良いよ、マンジロウ父、グッジョブ!)
それを聞いていて、マンジロウは
「そう思ったことはなかったけど、 (おい!)
そう言われてみれば、そうかもな」
と、どんどん
洗脳されていった。
おいらが思うに、
マンジロウはファザコンなんだね。
しつけに厳しかったマンジロウ父。
家が重苦しくて、海外にまで飛び出したマンジロウ。
いつかお互いを理解したい、仲の良い親子になりたい。
そういう欲求があったのだと思う。
おいらの方は、ドイツで暮すという夢がどんどん膨らんでいた。
一度「面白そう」と思うと、歯止めが効かない。
ヨーロッパの暮らしエッセイを買い込んで読み、
思いを馳せるようになっていた。
この後からは、マンジロウ父はおいらの前に出てこない。
裏でマンジロウをそそのかすだけ。
本当に計算のうまい人だ。
ここでまだデートに同席とかされてたら、
さすがのおいらも「おかしい」と思うだろう。
おいらとマンジロウは、食事デート以外にも逢うようになった。
京都のお寺コンサートにいったり、
おいらの好きなインストルメントライブにいったり。
マンジロウは一人暮らしだったので、
おうちで一緒に相撲中継を見たりした。それも英語放送で。
でも、それでもマンジロウから付き合いましょう、という話はなく、
しかもお泊りどことかチュウも抱擁もしたことがなかったんである。
なんでこの話、こんな長いんだ? でも大丈夫、次で終わるから!
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