もともと子供なんて欲しくなかったおいらが、
ひょんな感じで妊娠して、子供を産んだわけだ。
産んでみたら、やっぱかわいいわね。
少しずつ生活にも慣れて、いろいろ考えるようになってきた。
つまり、ゴウという人間について、おいらができること。
おいらは17歳の時、自分の人生について、目標設定を行った。
これから先、大学に進み、就職するにあたって、
何を目標にするか、決めたかった。
それを北極星にして、指針を取りたかった。
どれだけ回り道しても、
昼間はその星が見えなくても、
夜空にはしっかりと一番明るく光る星があり、
それに向かって船を進めていく。
自分を見失いがちなおいらは、北極星が欲しかったのだ。
人生の目標というのは、人によって様々だろう。
しかし普遍的なものにするためには、
シンプルで簡単で、解釈がいかようにもできるものがいい。
おいらは考えた。
人生で得たいものは何か。
金か。
男か。つまりは愛か。
地位か。
権力か。
美貌か。
スリルか。
未知へのチャレンジか。
賞賛か。
伝統か。
技か。
たどり着いたのは、これだった。
経験。
ひとつでも多くの経験を得よう。
多種多様の。
そう、人生において、貪欲なまでにいろんなことを経験しよう。
たとえその為に、お金や、男や、愛や、地位や権力や美貌をつぎ込むことになっても
経験が最もおいらの欲しいものなのだと、定めた。
高いところが怖くても、バンジージャンプがあれば飛ぶのだ。
ものすごく面倒でも、町内会の役職は受けるのだ。
(これは17歳の時に決めたのだけど、とても貫ける自信がないぞ)
やってみる?と聞かれたら、私はいいわ、なんて言ったりしないのだ。
それがどんなに辛いことでも、
例えば決別だとか、喪失であるとか、被害であったとしても
それもまるごと経験であり
おいらは経験するために生きていく。
そう決めた。
潔かったのだ、17歳のおいらは。ぴかぴかしてたのだ。
ゴウがどんなふうに自分の目標を決めるのかわからない。
でも、親として、
ゴウに「こう育って欲しい」と思うのは、悪いことではないはずだ。
17歳のおいらのように、北極星を、今日、定めよう。
夜泣きのゴウをあやしながら、おいらは北極星を見つけた。
幸せな男に、育てよう。
どんな逆境でも、
夕焼けがきれいだねと笑う男に育てよう。
毎日声を出して笑う男に育てよう。
脳天気だと、妻にチクリといわれる男に育てよう。
大学に落ちても、失恋しても、就職に失敗しても
なんとなく、次はいいことあるんじゃないかって思うんだ、根拠はないけど。
って言っちゃうバカに育てよう。
というわけで、
おいらは今日から脳天気ママになるのだ。
毎日笑って、歌って、踊るのだ。
年をとればとるほど、弱くなっていく気がするのです。
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