前回の記事で人種差別について触れた。
コメント返信してて、そういやおいらも差別されたなあと思い出した。
返信にも書いたけど
人種差別って結構複雑で、
例えば人気のパン屋に入って、いつまでたっても順番がまわってこないのは
人種差別なんだろうか?
ドイツでは列を作って待つ、というのがあまりなく
パン屋にせよ市場の肉屋にせよ
なんとなく人はたたずみ
店の人がなんとなく「この人が次かな」と思って声をかける。
あるいは「次は誰?」と聞く。
次はおいらなのに、
「私の番よ」と順番ぬかしされるのは差別なのか。
あるいは図々しいだけなのか。
それとも勘違いなのか。
店のおばちゃんに
「あの茶色いパンください」
と言ったら
「はあ? 何言ってるのかわかんない、ちょっとあんた替わって」
と違う店員にふられるのは差別なのか。
入れ替わった店員が気の毒そうな顔でクッキーをくれたのは
あのおばちゃんの人格に問題があることを示しているのか。
最初の頃はいちいちそういうことに傷つき
おいらが日本人(というかアジア人)だからだと思っていたが
だんだんそういうことを考えるのが面倒になった。
人種差別という言い方が適当なのかわからないが
おいらがドイツ人あるいは白人でないことによって
態度を変える人は
普段から嫌なヤツだろうと思う。
嫌なヤツはドイツ人に対しても嫌なヤツだろうし
そうなれば人種差別かどうかも怪しい。
小学校の時は教師にだけいい顔をして
同級生に嫌われてたんだろう。
女性なら、高校生の時は男子の前では甘い声をだし
同性に嫌われてたんだろう。
(そして意外と男性にはもてて余計嫌われたんだろう)
そんな人のことでくよくよするのは馬鹿らしい。
それに、おいらは日本人であることを誇りに思っている。
日本はそりゃあ問題だらけだけれども
いいとこだっていっぱいある。
だから例え差別されたとしても
それで日本人であることを恥じたり、恨んだりしない。
差別されるとしても日本人であることを捨てようとは全く思わない。
ここに考えが至ると
差別されてるかも、なんていうのは考えなくなった。
ところが。
かも、じゃなくってはっきりと差別されたことが一度だけあった。
聖マーティン祭っていうのをご存知だろうか。
普通は知らんわな。
故事はおいといて、
提灯もってねりあるく祭りだと認識していただければ結構。
去年、ゴウと一緒に初めて参加した。
行進のルートは決まっていて
ねりあるく人々(主に子供と保護者)はほぼ手作りの提灯を下げて
歌いながら道を進む。
提灯が思い思いに工夫されているので
見物客も多い。
メインストリートに近いところなどは
行列を守るために柵も設けられている。
そこで、おいらは
「おい!」と呼び止められた。
柵の向こうには40才位の太った白人男。
指を鳴らしておいらの注意をひき
おいらの顔を見てドイツ語でこう言った。
「国へ帰れ、中国人め!」
一瞬で頭に血が上る、という経験をあまりしないおいらだが
この時は沸騰した。
そして何を思ったのか、こう叫んだ。
「中国人ちゃうわ!」
我ながらがっかりである。
論点そこじゃねーだろう。
中国人に間違われたことに怒ってるんじゃないってば。
しかも英語で叫んでたし。
男はちょっとびびって
「じゃあ、フィリピンか!」
って言ってた。
おいらはまた反射的に
「恥を知れ!」
って叫んでた。やっぱ英語で。
それにしても
子連れで、機嫌良く歩いてる女性に向かって言う言葉じゃないよね。
彼はドイツ人だったんだろうか。
わかんない。
この時、自分の顔立ちや髪が
マイノリティなんだということを再確認した。
一目でわかるアジア人的特徴なのだと。
自分の国籍も文化も顔立ちも否定的にとらえていないので
変なおっさんに不愉快なことされた、という程度だが
ドイツ社会に必死で溶け込もうとしている状況だったら
とてもとても傷ついたと思う。
日本人は、日本を出れば人種差別される側に回る。
どの国の人間も、それは同じ。
それに気づけば
人種差別がいかにくだらないものか
わかるんじゃないだろうか。
おいらに罵声を浴びせた男は
きっと悲惨な人生を送っているのだと思う。
悲惨な人生を望まないなら
寛容になったほうがいい。
今回はそういうお話でした。
だからおいらは黒人差別してないのです。多分。
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