確か中学二年生だったか、
学校でペンパル協会を仲介してて、
年会費1000円くらいを払うと、アメリカ(正確には英語圏)に住む
同学年の相手を紹介してもらえた。
当時おいらはアメリカに絶大な憧れを抱いていたので
おこづかいをためて、ペンパルを申し込んだ。
同い年の金髪碧眼の女の子は、
いまいち美人ではなかったが、
それでもアメリカ人で、やっぱり憧れた。
きっと彼女は大きな白い家に住み、
両親に愛され、たまにはグランドピアノを弾いたりするのだ。
一緒に始めた友達は、文通を一年もたせられなかったが
おいらと彼女は高校に入っても続いた。
当然、おいらは英語がおぼつかず、
彼女に手紙を書くために必死で勉強したし、
彼女の書く文章は暗記するほど読んだ。
手紙に書くのは、好きな男の子のこと。
最近見た映画。
イベントがあるときは、お互いの文化を少し紹介したりして。
本当にかわいらしい文通だった。
アメリカでは、スタジオで写真を撮る文化があるのか
彼女はよく凝った背景の写真を送ってくれた。
スタジオで写真なんて、七五三しか経験のないおいらは
そんなことで猛烈に憧れを感じたもんだ。
お互い高校生になり、確か16歳を越えた頃だったか、
彼女から手紙が届いた。
「子供ができた」
Σ(゚□゚(゚□゚*)ナニーッ!!
そして数ヵ月後、彼女は玉のような男の子を産んだ。
青い目の、そりゃあかわいい赤ちゃんだった。
しかし彼女が子供を産んだことで、
おいらの中のアメリカへの憧れが急激に消えていった。
自分が16で子供を産む、というのが
あまりにも想像できない事態だったからだ。
むしろしたくないことだったからだ。
きっと宗教上の理由で堕胎できなかったのだろう。
もしかしたら、彼女が産むことを望んだのかもしれない。
いずれにせよ、おいらにとって、
当時子供を持つというのはおそろしい恐怖だった。
大学にも行きたいし、恋だって沢山したい。
もし16で子供を産んだら、学校中で話題になって
高校だって辞めなくちゃいけない。
そんなの、考えたくもない状況だ。
なんか、アメリカって怖い。
おいらと同じく、普通に恋をして、映画を観て、笑ってた女の子が
こんなことになってる。
それはなんだか、アメリカという国のせいのような気がした。
彼女は結婚はせず、
子供は実家で育てた。
結局、文通はその後一年ほどで途絶えた。
彼女は子育てで忙しかったのだろうし
おいらは以前ほど文通に燃えることができなかった。
おいらが彼女やアメリカという国に興味を失ったのは
思春期の潔癖症だったんだろう。
だって今なら、むしろ友達になりたいもんね。
あの男の子は、もう高校生だ。
でも彼女は、まだまだ恋愛現役年齢。
ああ、羨ましい。
最近、昔のことを唐突に思い出す。なんでだろ。暇なのか?