日本滞在中、マンジロウがおいらの実家に泊まったことがあった。
朝、時差ぼけで早く目覚めたマンジロウは、
早起きのおいらの母に「散歩にいってきます」と言って
5時間帰ってこなかった。
これは超人的な方向音痴マンジロウ、
どっかで行き倒れたかと思っていたが、
昼前になってひょっこり、普通な顔で帰ってきた。
「歩いて繁華街まで行ってきたんだ♪」
と、2時間半も歩き倒したことを自慢してきた。
そしてお気に入りのカフェで朝食を取り、
ちょっとお店をのぞいたりして、
電車で帰ってきたそうな。
言いたいことは山ほどあったが、
おいらは大人なので、
そうか、よかったね。で済ませた。
後日、弟が東京から帰省した。
仕事が終わって最終の新幹線に飛び乗ったが
家族は翌日に帰ってくると聞いていた。
弟は「そうだ、実家の鍵がない」と気づき
「玄関あけといて」と電話してきた。
夜中の1時に。
新幹線に乗る直前でも、新幹線の中でも、
それが無理なら、降りた時でも、
電話するチャンスは無数にあったはずなのに、
なぜ家に着く頃になって電話するのか。
みんなもう布団の中で寝ていたのをたたき起こされた。
弟の話をマンジロウにしたところ、
思わぬ返答があった。
「あいざぁ。それは仕方ないよ。
男はね、経験を積まないと、そういう器用さを身につけられないんだ。
俺だってね、いろんな国で暮らしたりさ
いろいろ経験してやっと、今があるわけ。
弟君はまだまだ、経験が足りないんだよ」
なに、この上から目線。
おいらからすりゃメクソハナクソですが。
「マンジロウ、それじゃあ言わせてもらうけども。
君、うちの実家に泊まった翌朝、散歩に出かけたね」
「うん。散歩に出てさ、あ~このまま繁華街まで歩いていったら
面白いだろうなって思ってさあ。
びっくりしただろ? まさか歩いていくなんて思わないだろ?」
「いやまあ、それはいいとしてだね。
おいらは君が散歩に出かけただけだと思ってたから
当然朝ごはんの用意して待ってたわけよ。
ご飯だって保温にしてたわけ。
君だって、繁華街にいくと決めた時でも
向かって歩いてる時でも、カフェに入る時でも
いくらでも電話する機会があったよね?
おいらは外出もせずずーーーーっと待ってたんだよ」
すると大変驚いたことに、マンジロウはこう言った。
「うわっ 俺、弟君と一緒だ!」
そうです。一緒です。
気づいていなかった君に乾杯。
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